【2018年 ママゴン2-3月号掲載】
世界26カ国ほど旅したバックパッカーで育休中のナース
豊川市在住 畔柳 奈津江さん 35歳
広島県広島市出身。ご主人の雄太さん(32歳)、昊青(こうせい)君(1歳)の3人家族。豊川市の病院に勤めており、2018年2月現在育休中。
世界へつながると信じた医療の道
中学生の頃から、外国の文化や言葉に惹かれて国際科のある高校へ進学しました。在学時にアルバイトをして、夏休みに国際交流プログラムで中国や韓国へ。中国・四川省のチベット自治区へ初めて訪れた時、幼い子どもが働く姿やストリートチルドレンに遭遇し、衝撃を受け、紛争や貧困について学び将来に生かしたいと思いました。国際政治や外交が学べる京都の大学へ進学し、語学力を高めるためにシドニーへ留学。
いざ就職活動となった時、自分が興味をもっていることを仕事につなげるのは難しいのだと思い知った頃、たまたま外部の保健分野の先生から、海外のお産を手助けするための国際組織についての話を聞きました。「医療の道に進めば国際につながるかも」 と感じ、ナースになろうと決意し大学卒業後、看護学校へ入り直しました。
思いつきのインド旅が大きな一歩に
看護学生1年目の夏休み、看護の原点を知りたいと、チケットとかばんひとつだけ持った “バックパッカー” として、インド・ネパールに1ヶ月滞在しました。インドに初めて行こうと思ったのは、完全に “思いつき” です。行ってみようという気持ちひとつでした。旅の最中は私一人なので恐怖も感じましたが、知らない世界に足を踏み入れたことで「冒険心」と自分で自分の身を守り「生きていく」という、今までにない感覚がたまらなく心地良く、20代では約12カ国をバックパッカーとして旅しました。
旅を重ねていくことで、物事をシンプルに考えるようになっていきました。あえて何にもない素朴な村に行くので、村の人の優しさに心打たれることが何度もあり、人生の中でとても価値のある経験をしました。まさに“百聞は一見に如かず”です。
チベットで主人と出会う
29歳の頃、東京の救急病棟で4年間働いていましたが、忙しい生活が続く中モチベーションは、どんどん下がってしまいました。そこで、次の人生を切り開こうと、東京を離れて、大学時代に留学した思い出の地シドニーへ行こうと決めました。
上海からチベット、アジア圏を旅しながらシドニーを目指している途中、チベットで主人と出会いました。主人はその時、初バックパッカー&初世界一周! 当時の私は「この人は私以上に生命力が強い」と感じて興味をもち、一緒にチベット・ネパール・インドを2ヶ月半ほど旅をすることに。その後、結婚を前提に交際がスタートしました。
交際最中は、オーストラリアの看護インターンプログラムにより、老人施設などで働きました。私の中では、海外に住むのもひとつの選択肢だったので、主人と一緒にニュージーランドで暮らし、その後2人で資金を貯めて、キャンプ道具一式だけ持って世界一周をしました。約16カ国を巡り、大自然の中でボルダリングをしたり、崖を登って海に飛び込むディープウォーターソロを体験したりと、地球の凄さを改めて体感する経験をしました。
チベットの空と大地のように
息子の昊青 (こうせい) という名前は、私たちの出会ったチベットにちなんで名付けました。昊=チベットの広々とした青空が大好きで、空と大地のように育ってほしいという意味を込めました。青=中国からチベットまでをつなぐ「青蔵 (せいぞう) 鉄道」から取りました。同じ日・同じ時間帯にこの鉄道に乗っていたことで、偶然にも私と主人はチベットで出会うことができたのだから。
息子には、日本の価値観が全てではなく、いろんな選択肢がたくさんあるということを教えたいですね。私自身、親から「できっこない」と言われ続けてきたんです。“女だからこうだ”という概念が強くて、その反動でバックパッカーになったのかもしれないです。息子の可能性を否定せずに、伸び伸びと育てていきたいなと思っています。海外に行きたいと言ったら、もちろん行かせたいですね!
正しいことはひとつじゃない
今の日本はとにかく生きにくい。精神的に追い詰められて弱ってしまう人が少なくないです。看護師として働いているので、余計にそういう人達に出会います。簡単に情報が手に入る時代で便利になっている反面、情報に左右されやすく人と違うことで追い詰めらてしまいがち。他の国と比べて、多様性の文化でない分、同じであろうとすることにこだわってしまうのかもしれません。
でも、世界は広いです。一歩外に踏み出せば、自分が正しいと思っていた価値観も、実は全然たいしたことじゃないことに気づきます。私はバックパッカーとして、自分がこれまで日本で作ってきた変なプライドや固定概念、限界といったものを塗り替えることができました。新しいものの見方を手に入れたのです。
人と違って当たり前。正解は、必ずしもひとつではないということに気が付くことができると、肩の力もスッと抜けて生きやすくなるでしょう。そして更に子育てもしやすい世の中になると思います。