【2018年 ママゴン2-3月号掲載】
言語聴覚士とこぎん刺し作家のふたつの顔を持つママ
豊橋市在住 岩橋有香さん 38歳
北海道・札幌市出身。夫、長男(小学6年生)、次男(小学3年生)、三男(小学1年生)の5人家族。ことばの教室・相談 cotobato(ことばと)とイラストこぎん刺しを運営。
きっかけは自閉症の友達
幼稚園の頃、言葉が不自由な自閉症の友達と出会い、どうしたらうまく伝えられるんだろうと思っていました。学生時代に、言葉に遅れのある子どもと向き合う ※言語聴覚士という仕事があることを知り、発達の遅い子どもたちをマンツーマンで手助けできたらと思い、言語聴覚士の国家資格を取得しました。
その後、田原市の病院で理学療法士の主人と出会い結婚。結婚して間もなく、義父が脳梗塞になり自宅介護となりました。仕事を辞めて介護に専念していた頃、知り合いから「子どもの言葉の発達が遅いから、言葉専門の家庭教師をしてくれない?」と相談を受けました。そこで、言語聴覚士のスキルを活かし、毎週友人宅で言葉の家庭教師をしたのが「ことばの教室・相談cotobato(ことばと)」をスタートするきっかけでした。現在は、自宅の一室を教室にして、子どもの言葉の発達や発音を練習できる場所を提供しています。
※言語聴覚士とは、うまく話せない・文字が読めない言語障害や音声障害などを専門的にサポートする人のことです
刺し子職人だったおばあちゃん
東北に住む祖母はこぎん刺しの刺し子職人でした。こぎん刺しとは、青森県の津軽地方の伝統的な刺し子の技法で、さまざまな幾何学模様が特徴です。祖母の姿を見て育ってきた私は、幼い頃から刺繍が大好きでした。
言葉の教室を始める前から刺繍の仕事をしたいなと思っていたので、土台作りのために刺繍教室に通いました。教室に通い始めて4年目に、こぎん刺しをもっといろんな人に知ってほしい、興味を持ってほしいと、独自で作ったのが 「イラストこぎん刺し」 です。伝統的なこぎん刺しの柄と合わせ、ポップなイラストを取り入れたことで、幅広い世代にこぎん刺しをPRすることができました。 現在は、作品を作ったりワークショップを開いています。
私は 「発達の遅い子どもや、その子どもをもつお母さんにも手しごとの楽しさを伝えたい」 と思っています。言語聴覚士だからこその視点だと思いますが、発達が遅い子も参加できるワークショップを開催したいと、親子で楽しめる場を設けています。子どもが主役となって、こぎん刺しの作品を作っていくのですが、針は、刺繍の針と違い爪楊枝くらいあって大きく、針先も丸まっているので、子どもが使っても危なくないのが特長。親子の楽しい触れ合いを、こぎん刺しで体感してもらえると嬉しいです。
「楽しむ」ことで一気に視野が広がる
平日は、9時から12時まで午前の言葉の教室、12時から15時まではイラストこぎん刺しや刺繍の時間、15時半から18時頃まで午後の言葉の教室です。教室が終わった後は、家族との時間。「言語聴覚士としての仕事、イラストこぎん刺しの仕事、2つの仕事をもち大変では?」 と言われますが、自分が心の底から楽しい! と思っているので、大変だと思うことは一切ありません。また、3人の子どもたちに、自分が努力している姿を見せたいというのもあります。結果が必ず出るんだよ、と口だけで言っても子どもには伝わらないんですよね。自分の成功体験や失敗体験を、しっかりと子どもたちに見せることが必要だと考えています。
また、家族全員で一緒に 「楽しむ」 ということも大事にしています。数年前、子どもたちが 「ホストファミリーをやってみたい」 と言いました。子どもたちがやってみたいなら、家族みんなで楽しんでやろうと決めて、家族で英語の猛勉強しました。無事ホストファミリーとなり、今では、年に1回自宅に留学生を招き、ホストファミリーをしています。やらないといけない! というよりも、楽しくやってみようという思いひとつで、一気に視野が広がると思っています。
なんでも話す子育て
会話が多い家庭なのか、子どもは男3人ですがとても仲が良く、あまり喧嘩をしません。もし、喧嘩をした場合は 「仲直りの時に約束を決めよう」 と子ども達に言っています。仲直りのきっかけとして、我が家では握手であったり、ハグだったりと、喧嘩した後のひとつの区切りをつけるようにしています。それが子育てのモットーのひとつです。
また、忙しい朝は特に 「給食袋入れたの?」 「時間割は合ってるの?」 など、お母さん自身が口うるさくなってしまいがちです。その気持ちもすごくわかりますが、我が家では朝の用意はほとんど私がしています。それは、朝学校へ行く5~10分前に読書時間を設けているからです。朝の準備等は、大きくなったら自分でやるので、それよりも子どもたちにとって 「やるべきこと」 を優先的にさせてあげたいなと思っています。
先日、長男が小学校で5分間スピーチを作るという宿題がありました。その中で彼は 「前向きにいろんなことをやっているお母さんを尊敬しています」 と言ってくれました。なぜ、前向きにやっているのを知っているのかと言うと、仕事のことはもちろん日々の良いこと・悪いことを、全部子どもに話しているからです。これからも、子どもたちには包み隠さずなんでも話し、 「楽しむことの大切さ」 を伝えていきたいです。